「税理士試験の対策講座といえば大手予備校の大原かTAC」というのが税理士受験生の常識で、実際のところ、大原かTACに通って勉強する受験生は少なくありません。
でも、近年は、予備校ではなく通信講座を選択する受験生も増えていて、特に予備校に通う時間がない社会人や費用をを抑えたい学生が選択するケースが増えています。
結果、選択肢は「大原かTACか」の2択ではなくなったというのが現状です。
この記事では、税理士試験の予備校・通信講座5校を比較します。
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税理士講座のある通信講座・予備校
この記事で比較する税理士試験の対策講座を開講している通信講座・予備校は次の5つです。
- LEC
- TAC
- 資格の大原
- クレアール
- スタディング
LEC
LEC東京リーガルマインドは、全国展開している大手予備校です。
LECの税理士講座は全国2校にしかなく、地方在住なら通信講座を受講することになります。
でも、通信講座でも開講しているのは簿記論・財務諸表論・法人税法・所得税法・相続税法・消費税法の6科目のみで、他の予備校より少ないです。
他の大手予備校ほど税理士講座に力を入れておらず、合格実績も公表されていません。
通信講座も開講していますが、通信講座専門の講座と比較すると見劣りするところが多いです。
TAC
TACは、資格試験の対策講座を開講している大手予備校の一つです。
税理士試験の11科目全ての対策講座を開講し、毎年高い合格実績を叩き出しており、資格の大原と税理士講座の2強体制を形成しています。
講師層が厚く、講師満足度の高さが高いところも特徴です。
TAC本科生の累計合格者数は2885人(2011~2019年)おり、2019年度は289名合格という実績があります。
一方で、通信講座についてはオンライン学習システムに課題が見られます。
資格の大原
資格の大原は、LECやTACと並ぶ大手予備校です。
「税理士講座といえば大原」という人も多く、知名度も合格実績も他の予備校より頭一つ抜きんでています。
当然ながら税理士試験の11科目全ての対策講座があり、マイナー科目を選択したい人も安心です。
2019年度試験では、官報合格占有率57.9%(合格者434名)という圧倒的な実績を残しています。
一方で、通信講座については機能面を中心に課題が見られます。
クレアール
クレアールは、資格試験の対策講座を開講している老舗の通信講座です。
非常識合格法という独自の短期合格メソッドが効率的に学習したい人に人気で、社会人を中心に受講されています。
受講できる科目は、簿記論・財務諸表論・法人税法・相続税法・消費税法の5科目のみです。
つまり、クレアール税理士講座を受講して合格するなら、上記5科目しか選択肢はありません。
自分で好きな科目を選択して勉強できないのはネックです。
スタディング
スタディング(旧通勤講座)は、社会人をターゲットにした新興のオンライン学習サービスです。
2008年のサービス開始から10年ちょっとで累計利用者数が8万人を突破した人気のサービスで、税理士講座の受講者数も伸びています。
社会人向けに設計されているので、スキマ時間でも無理なく合格を目指せるところが最大の魅力です。
受講できるのは5講座6科目(簿記論・財務諸表論、法人税法、相続税法、消費税法、国税徴収法)のみです。
所得税法が勉強できないのがネックですが、受験生に人気の科目は全て揃っています。
税理士講座のある通信講座・予備校5校を徹底比較
税理士講座のある通信講座・予備校5校を「6つの基準」で徹底比較します。
税理士講座を比較する基準
6つの基準は次のとおりです。
- 価格:受講にかかる費用
- 運営会社:業績など
- 合格実績:合格者や合格率など
- 講座の質:講師・教材・講義・カリキュラム
- オンライン:オンライン学習システムの使い勝手
- サポート:学習サポートの手厚さ
いずれも通信講座や予備校の公式サイトに掲載されている情報です。
でも、公式サイトごとに掲載されている場所や表示がバラバラで比較しにくいので、一つにまとめました。
司法試験予備試験の予備校おすすめ比較でも同様の基準で比較しています。
税理士予備校の比較①:価格
予備校 | 簿記論 | 財務諸表論 | 所得税法 | 法人税法 | 相続税法 | 消費税法 |
---|---|---|---|---|---|---|
スタディング | 59,800円 ∼89,800円 | 簿記論と パック | - | 49,800円 ∼63,800円 | 49,800円 ∼63,800円 | 49,800円 ∼63,800円 |
クレアール | 350,000円 178,500円 | 350,000円 178,500円 | - | 390,000円 198,900円 | 350,000円 178,500円 | 240,000円 122,400円 |
資格の大原 | 215,000円 | 215,000円 | 236,000円 | 236,000円 | 236,000円 | 140,000円 |
LEC | 203,500円 ∼225,000円 | 簿記論と パック | 123,200円 | 123,200円 | 123,200円 | 123,200円 |
TAC | 230,000円 | 230,000円 | 255,000円 | 255,000円 | 255,000円 | 155,000円 |
予備校 | 酒税法 | 国税徴収法 | 固定資産税 | 事業税 | 住民税 | 全科目 |
---|---|---|---|---|---|---|
スタディング | - | 49,800円 ∼63,800円 | - | - | - | - |
クレアール | - | - | - | - | - | - |
資格の大原 | - | 140,000円 | 140,000円 | 140,000円 | 140,000円 | - |
LEC | 290,400円 | - | - | - | - | - |
TAC | 155,000円 | 155,000円 | 155,000円 | 155,000円 | 155,000円 | 2年本科生 746,000円 3年本科生 775,000円 ※他コースもあり |
価格が最も安いのはスタディングです。
5科目合計の税込価格が30万円程度で、大手予備校と比較すると1/3程度の価格で受講できます。
「安かろう悪かろう」だと思うかもしれませんが、合格に必要な講義やテキスト、問題集などが全て付属します。
一方で、講座価格の高さが目立つのが資格の大原とTACで、スタディングと比較すると各科目2倍以上の価格設定となっています。
複数科目を同時に受講すれば割引価格が適用されますが、それでも70万円以上はかかるので、抵抗を感じる人も少なくありません。
クレアールは、定価では大手予備校以上の価格ですが、頻繁に割引セールを実施しています。
定価販売されていることはほぼないので、割引価格で受講できると考えておいて問題ありません。
税理士講座の比較②:運営会社
予備校 | 運営会社 |
---|---|
スタディング | KIYOラーニング株式会社 |
クレアール | 株式会社クレアール |
資格の大原 | 学校法人大原学園 |
LEC | 株式会社東京リーガルマインド |
TAC | TAC株式会社 |
運営会社の規模が大きいのは、LECを運営する株式会社東京リーガルマインド、TACを運営するTAC株式会社、資格の大原を運営する学校法人大原学園です。
いずれも長年安定して予備校事業を運営しており、経営状態に問題はありません。
また、スタディングを運営するKIYOラーニング株式会社とクレアールを運営する株式会社クレアールも、事業規模は上記3社に及びませんが、経営状態に問題は見当たりません。
特にKIYOラーニング株式会社は、スタディングの受講者数が急増していることもあり好調です。
税理士講座の比較③:合格実績
予備校 | 合格実績 |
---|---|
スタディング | 非公表 |
クレアール | 非公表 |
資格の大原 | 2019年度試験の 官報合格占有率57.9% (434名) |
LEC | 非公表 |
TAC | 2019年度試験の合格者289名 |
税理士講座の合格実績を公表しているのは、資格の大原とTACです。
資格の大原は、2019年度税理士試験の官報合格占有率が57.9%という圧倒的な実績を誇ります。
官報合格者749名中434名が資格の大原の講座を受講している計算です。
また、TACは、2019年度の官報合格者が289名と公表しています。
資格の大原が434名でTACが289名なので、2019年度税理士試験の合格者の実に95%以上が2校の受講生という計算です。
複数の通信講座の講座を受講している人も含まれますが、それを考慮しても圧倒的な占有率といえます。
冒頭に書いた「税理士試験の対策講座といえば大手予備校の大原かTAC」という常識は、こうした合格実績から来ているわけです。
他の3校は合格実績を公表していません。
ただし、公式サイトには合格者の声や合格体験記というページが設置してあり、合格者がいることは確認できます。
税理士講座の比較④:講座の質
講座の質は、講師、教材、講義、カリキュラムに分けて解説します。
講師
予備校 | 人気講師 | 講師数 |
---|---|---|
スタディング | 藤田健吾 | 6名 |
クレアール | 河野上浩司 | 3名 |
資格の大原 | 岡ひろみ | 150名以上 |
LEC | 富田茂徳 | 7名 |
TAC | 髙田宏一 | 50名以上 |
講師層が厚いのはTACと資格の大原です。
TACと資格の大原は、それぞれ全国の校舎に担当講師がおり、総勢は50名以上になります。
特にTACは、受講生の講師に対する満足度が90%を超えており、講師の質の高さは大きな魅力です。
ただし、通信講座を担当する講師は1科目1人~数人なので、講師数=講義のバリエーションの数というわけではありません。
クレアールの初学者向け税理士講座は5科目しか開講しておらず、講師は3名体制です。
公認会計士と税理士資格のある河野上先生が簿記と財務諸表論、消費税法を担当し、他2人が法人税法と相続税法を担当しています。
スタディングの税理士講座は6科目開講しており、各科目1人の講師が担当しています。
各科目に精通した講師が分かりやすい講義をしてくれるので、初学者でも取っつきやすいのが魅力です。
教材
教材は、TACと資格の大原が優秀です。
大手予備校らしく、長年蓄積された合格ノウハウや頻出ポイントなどが必要十分に盛り込まれています。
フルカラーテキストで図表も多いので、初学者でも見て分かりやすいのが特徴です。
クレアールのテキストは、大手予備校に比べると簡素で内容もコンパクトにまとまっています。
非常識合格法という短期合格メソッドに基づいて作られているので、合格点が得られる情報だけが厳選されているからです。
フルカラーではないのが残念ですが、合格に必要な情報はまとめられています。
スタディングは、スライドを見ながら講師の説明を聴くという講義スタイルなので、Webテキストは復習用という位置づけで、講義の重点ポイントなどが端的にまとめられているのが特徴です。
冊子版は別売オプションなので、別途購入する必要があります。
講義
講義内容が優秀なのは資格の大原です。
高い合格実績を支える質の高い講義は、初学者から学習経験者まで広く支持されています。
忙しい人を意識した、1講義60分・1チャプター10分という短い講義時間も魅力です。
クレアールとスタディングの講義は1講義の時間が短く、合格に必要なポイントを絞って説明されます。
「これだけで大丈夫なのか」と思う人もいますが、合格に必要な情報は漏れなく入っているので心配はいりません。
特にスタディングは働きながら合格を目指す社会人をターゲットにしているだけあり、1講義の短さやスライド活用などスキマ時間で学習できる工夫が見られます。
カリキュラム
カリキュラムが優秀なのは、TACと資格の大原です。
長年蓄積されたノウハウと、講師による毎年の過去問分析などに基づいて作成されるカリキュラムは質が高く、高い合格実績に結びついています。
ただし、やや網羅的なところがあり、働きながら限られた時間で学習するにはハードルが高めです。
一方で、通信講座のクレアールは、非常識合格法という短期合格メソッドに基づくカリキュラムを組んでいます。
効率化を重視しており、大手予備校のような網羅性はありませんが、社会人でも短期間で合格を目指せるのが魅力です。
スタディングの税理士講座も効率特化です。
講義の受講時間は5つの講座のなかで最も短いですが、インプットとアウトプットを繰り返す学習フローで効率的に知識を定着させられます。
税理士講座の比較⑤:オンライン
オンラインが優秀なのはスタディングです。
スタディングのオンライン学習システムは他資格の講座でも評判ですが、税理士講座でも高い人気を誇ります。
スマホでも快適に視聴できることはもちろん、豊富な学習サポート機能も受講生に人気です。
Webテキストや暗記ツール、学習フローや進捗管理など学習に必要な機能が充実しており、全てスマホで操作できます。
そのため、受講生はいつでもどこでも学習に集中することが可能です。
他の4講座はオンラインで講義を視聴できますが、スタディングのような学習サポート機能はありません。
また、パソコンでは快適に視聴できますが、スマホでは視聴性や操作性が落ちてしまうのも課題です。
税理士講座の比較⑥:サポート
大手予備校のTAC、資格の大原、LECはサポート体制が充実しています。
メールや電話で回数無制限の質問を受け付けてくれたり、理論問題の添削を行ってくれたりするのは魅力的です。
ただし、対面による相談や質問ができる通学コースほど手厚いわけではありません。
通信講座のクレアールは、入学相談から学習カルテの作成、回数制限なしの電話・メール質問、Webセミナー配信など受講生サポートが充実しています。
講座の担当講師に直に質問・相談できるので、疑問や悩みを積み残さず学習を進めることが可能です。
通信講座としてはトップレベルのサポート体制で、モチベーションやスケジュールの管理が苦手な人にはピッタリな講座といえます。
スタディングには質問サポートがありません。
人件費を削減して講座価格を抑えているからなのですが、難関の税理士試験の勉強で質問できないのはデメリットです。
ただし、スタディングの講座は初学者にも分かりやすいですし、学習フローや進捗管理などはシステムで対応できるので、大きな問題とは言えません。
税理士試験はTACと資格の大原以外の通信講座でも合格できるか
結論から言うと、税理士試験は通信講座でも合格できます。
合格者の95%以上が大手予備校のTACと資格の大原の受講生であることは事実です。
でも、クレアールやスタディングの公式サイトには合格者の感想が複数掲載されており、合格者がいることが分かります。
TACや資格の大原の通信講座はおすすめか
TACと資格の大原の合格者は確かに多いですが、大半が通学コースの受講生です。
通学によってスケジュールや学習ペースを管理し、講師の手厚いサポートを受けて合格しているわけです。
でも、通信講座となるとそうはいきません。
講座価格は通学コースと大差ありませんが、受けられるサポートの質は下がりますし、講師との距離も遠くなります。
つまり、高い費用を払うのに、合格に重要な役割を果たすサポートの質が通学コースより低いわけです。
そのため、よほど学習コストをかける余裕がある場合を除き、TACや資格の大原の通信講座を選ぶメリットは少ないと言えます。
かといって、働きながら勉強する場合は通学コースに通う時間は確保しにくいです。
税理士試験(5科目)に合格するには順調にいっても1~3年くらいかかりますが、この期間ずっと仕事をしながら予備校に通うのは現実的とは言えません。
税理士試験の通信講座を選ぶメリット・デメリット
働きながら税理士試験の勉強をするなら、通信講座の利用が向いています。
税理士試験の通信講座のメリット・デメリットは次のとおりです。
メリット | ・講座価格が大手予備校より安い ・端末があればいつでもどこでも学習できる ・スキマ時間に学習して短期合格を狙える |
デメリット | ・スケジュールやモチベーション管理が難しい ・全科目を取り扱っていない |
通信講座のメリットは、大手予備校より価格が安いことや、予備校に通う手間や時間がかからないことです。
また、スキマ時間に効率的に学習できるカリキュラムが組まれているので、働きながらでも無理なく合格を目指せます。
一方で、スケジュールやモチベーション管理が難しいというデメリットがあります。
また、クレアールは5科目、スタディングは6科目のみの取り扱いなので、自分が学びたい科目がないところもデメリットです。
税理士試験の通信講座・予備校のまとめ
税理士試験の通信講座・予備校5校を比較しました。
合格実績や講座の質で選ぶなら、TACか資格の大原の通学コースが確実でしょう。
でも、働きながら何年も予備校に通い続けるのはハードルが高いと言わざるを得ません。
大手予備校にも通信講座はありますが、サポート面の質がどうしても下がるので、高い費用を払ってまで受講するメリットは小さくなります。
そのため、働きながら合格を目指すなら、通信講座専門校の税理士講座を受講するのが向いていると言えます。
各講座は特徴があり、評判が良くても自分に合うとは限りません。
まずは気になる講座の公式サイトにアクセスし、講義視聴やテキストのチェックをしてみましょう。
また、サイトだけで講座の特徴をとらえきれない場合は、資料請求もしてみてください。
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